Library of the Year 2012 最終選考会は終了いたしました。多数のご来場、ありがとうございました。
- 大賞はビブリオバトルが受賞しました。おめでとうございます!
- Library of the Year 2012大賞を受賞したビブリオバトルからのコメント(谷口忠大氏)と審査委員長のコメントを掲載いたしました。 >>コメント
- ぜひLibrary of the Yearについてご感想・ご意見をお寄せ願います。
Library of the Year 2012の概要
Library of theYear 2012は、第14回 図書館総合展の図書館総合展運営員会主催、NPO法人知的資源イニシアティブ(IRI)が企画・運営するフォーラムとして開催いたしました。
2012年11月20日(火)午後1時00分~2時30分、パシフィコ横浜(横浜市みなとみらい)にて、今回決定した優秀賞4機関を対象として、最終選考を公開いたしました。最終選考では、各機関についてIRIメンバーがプレゼンテーションを行い、ディスカッションを経て、審査員7名(選考会一般参加者票1を含む)による投票によって大賞を決定しました。合わせて、大賞及び優秀賞、特別賞の表彰式を行いました。
この最終選考会は、パシフィコ横浜で開催される第14回図書館総合展(11月20日~22日)の一環として行なわれました。
Library of the Year 2012 プレスリリース(2012/09/28) (PDF:83KB)
Library of the Year 2012 優秀賞・最終選考対象
2012年は、IRIメンバーおよび外部推薦で寄せられた23施設・団体・サービスの中から、下記の4機関が優秀賞に選ばれ、大賞の最終選考対象となりました。
CiNii
大学に限らず極めて広範に利用されるサービスとして、日本における学術コンテンツ発信の先進事例となっている点が評価されました。2011年11月にリニューアルされ、CiNii ArticlesとCiNii Booksの2本立て構成になったことを機会とし、今年の候補となりました。
〒101-8430 東京都千代田区一ツ橋2-1-2
国立情報学研究所 CiNii担当
(CiNii Articles) http://ci.nii.ac.jp/
saveMLAK
東日本大震災における、博物館・美術館(M)、図書館(L)、文書館(A)、公民館(K)についての被災・救援情報を収集・提供する活動、支援者と受援者をつなぐ中間支援活動です。多数の有志の参加により幅広い活動として行われたことが、今後の災害支援の在り方のモデルになるとして評価されました。
http://savemlak.jp/
ビブリオバトル
発表者による好きな本のプレゼンやディスカッションを行うイベントです。「人を通じて本を知る/本を通じて人を知る」というコンセプトを掲げた知的書評合戦として、全国大会が行われるほどの盛り上がりを見せています。継続的に行われていること、各地で開催されていることなども評価されました。
http://www.bibliobattle.jp/
(普及委員会) info@bibliobattle.jp
三重県立図書館
県立図書館のあるべき姿をめざす「明日の県立図書館」をオープンな手法で策定し、進めていること、旬の企画を率先してプロデュースし、県内各地の公共図書館と共催する形で活動を展開していることなど、県立図書館が県内の図書館活動を積極的に推進している点が評価されました。
〒514-0061 三重県津市一身田上津部田1234
http://www.library.pref.mie.lg.jp/
大賞受賞者・審査委員長のコメント
大賞受賞のコメント
ビブリオバトル普及委員会代表・立命館大学情報理工学部 谷口忠大先生
この度はLibrary of the Year 2012 大賞の栄誉に与りましたこと,本当にありがとうございました.この場を借りて関係各位に厚く御礼申し上げます.
誕生に遡れば,ビブリオバトルは図書館とは直接の関係は無い場所で生まれた「本の紹介ゲーム」でした.いつぞやから「人を通して本を知る,本を通して人を知る」というキャッチコピーと共に全国各地にその活動が広がって行くようになりました.初めは大学や書店などでの開催が多かったのですが,公共図書館でも2011年頃から開催事例が増えてきておりました.そんな中,ビブリオバトルが図書館に関するこのような大きな賞をいただけたことは,僕達,ビブリオバトルの普及に携わってきた者にとっては驚きであると同時に,この上の無い喜びでもあります.本当にありがとうございます.
ビブリオバトルが生まれたのは2007年ですが,普及が進みだしたのは2010年頃からです.ビブリオバトルの普及黎明期から僕自身がビブリオバトル普及委員会のコアなメンバーと話していたことの一つに「図書館のカタチ」もしくは「図書館2.0」についての議論がありました.それは,「ビブリオバトルってある意味でソーシャルな図書館の機能をもっているよね?」という認識についての議論でした. ビブリオバトルは「図書館」というハコは持っていませんが,カフェであれ,会議室であれ,その場を「人を介して本と出会う空間」にする機能をもっています.図書館には様々な役割がありますが,その一つとして「本との出会い」に焦点を当てるならば,ビブリオバトルは少なくとも図書館の機能の一部を持つと見なせるのではないでしょうか? ビブリオバトルは人との繋がりの中で,その開催場所という物質的空間に拘束されることなく,本との出会いを生むことができます.僕自身はビブリオバトルのことを「ソーシャルな位相空間に存在する図書館のような存在」として解釈していました.
僕達は知識社会において,情報をとりまく環境状態,時代の要請に応じて,知識の流通の仕方について適応的に振舞って行かねばなりません.百年前に比べ図書の出版点数は爆発的に増え,誰一人,出版された全ての書籍を生きている間に読破出来る人間は存在しなくなりました.爆発的な情報化社会の濁流の中で,情報との「出会い方」についても新たな方策を得るべき時代にあるのではないかと思います.本受賞も,その方策の一案としてのビブリオバトルが評価された結果ではないかと考えております.
ビブリオバトルは,本との出会いを,一人ひとりの読者の解釈,想い,人間関係の中に見出し,それらを語りの中で紡ぎ上げ,ゲームというかたち繋ぎ合わせる事を目指してきました.それが「人を通して本を知る」というフレーズに包まれたニュアンスです.
また,本は読む人によって読み取られる意味が異なります.そして,それ故に,その本について人が語るとき,その言葉はその人自身を語る言葉にもなります.だからこそ,この解釈の多様性の故に,ビブリオバトルは「本を通して人を知る」場を生み出すのです.本について語る言葉は,知らず知らずの内に自らについて語る言葉になるのです.
現在,爆発的な情報化社会の濁流の中で,情報との「出会い方」,人と人が交わる「サードプレイス」に関して図書館のあり方が問われる時代だといわれます.そんな中で,「ビブリオバトル」という存在が図書館の栄誉ある賞をいただけたことは,とても意義深く,ありがたく,また象徴的なことだと感じております.ビブリオバトルがこれからも,公共図書館のよりよい発展に貢献できる存在でありつづけられる事を願うとともに,そうあるようにその開催方法や運営方法などについても,普及活動の中で,より発展・洗練させていければと思っております.
また,受賞主体のあり方についても,ビブリオバトルの受賞はLibrary of the Yearの歴史の中でも非常にエポックメイキングなことなのでは無いかと推察します.
ビブリオバトルは明確な建物を持っている図書館でも,特定の事業体が開発し提供しているWEBサービスでもありません.誰もが簡単に開催できるビブリオバトルは全国の様々な個人及び図書館,書店,一般企業,自治体といった団体によって自律分散的に,主体的に企画されて実行されています.ビブリオバトルはサービスでも組織でもなく「概念」なのです.
Library of the Yearではこれら多くのビブリオバトル愛好家を代表してビブリオバトル普及委員会が賞を受け取らせていただきました.ビブリオバトル普及委員会という任意団体は常勤職員が一名も居ないボランティア団体で,基本的には各地でビブリオバトルを主体的に開催している個人・団体が緩やかに繋がるためのネットワークといったような存在でしかありません.
故に,この賞の真の受章者は全国各地で自律分散的にビブリオバトルを開催している開催者,また,このゲームを楽しんでいる参加者全員では無いかと考えています.そういう意味では,僕が,この文章を書かせていただいている事自体が僭越というか,恐縮しきりな面があるのですが,その日本中のビブリオバトル愛好家を代表して,受賞の喜びと御礼を申し上げる次第です.
この度はLibrary of the Year 2012大賞という栄誉,誠にありがとうございました.
この大賞を頂いた後に,ビブリオバトルは何処へ向かうのでしょうか?
僕達がビブリオバトル普及活動の中で,いつも言っていることなのですが,ビブリオバトルの目標は,サッカーやドッジボールと同じような「普通名詞」になることです.日常生活の中に自然と存在するビブリオバトルになれるまで,今後とも,このまだまだ新しい「概念」の普及と定着にご支援,ご協力いただければ幸いです.
2012年11月26日
ビブリオバトル普及委員会代表・立命館大学情報理工学部 谷口忠大
審査委員長のコメント
審査委員長 大串夏身
今年は、4つの最終選考にのこった図書館、団体、機関、それぞれに図書館のこれからを考える上で示唆に富むもので、領域が重なるものがなかったために非常に難しい選考となりました。
公共図書館の基本的な役割である読書のススメ、図書館の持つ知識・情報と住民・利用者を結びつける方法、図書館の改革の方法、地域での知的な創造の組織である図書館が活用する情報源など、それぞれにこれからの図書館を考える上で示唆を与えるものでした。
大賞を受賞したビブリオバトルは、その中でも、公共図書館が地域で0歳児からの読書をすすめるために、図書館を本と人の出会いの場とするとともに、地域に働きかけることが求められている現状のなかで、ひとつの方法として注目されるものです。こうした本と人を結びつける方法は、古くはフランスの公読書、アメリカからはじまった朝読などがあり、最近ではヨーロッパからアニマシオンなどが日本にも輸入されるようになったのは皆さんもご存知のことと思います。ビブリオバトルはいわば日本発とも言えるもので、公共図書館が本と人の出会いの場となっていくために、また公共図書館の読書のススメの活性化のために大いに活用が期待されるものと言えましょう。
Library of the Year (LoY) とは
「Library of the Year」は、IRIが図書館など全国の知的情報資源に関わる機関を対象として授与する賞で、2006 年に始まりました。
選考基準は、以下のとおりです。全国の公共図書館を総合的に評価して、ベストの図書館を決めるものではありません。
- 今後の公共図書館のあり方を示唆する先進的な活動を行なっている。
- 公立図書館に限らず、公開された図書館的活動をしている機関、団体、活動を対象とする。
- 最近の1~3 年間程度の活動を評価対象期間とする。
お問い合わせ先
IRI事務局 info【 A 】iri-net.org (【 A 】を@に読み替えてください)