LoY2019 授賞理由

優秀賞 2019


対象事業名:札幌市図書館政策のこれまでとこれから ~図書・情報館の誕生~

機関名 札幌市図書・情報館

授賞理由

 札幌市では近年、電子図書館、大通カウンターでの図書の貸出・返却、えほん図書館の開設と 政令指定都市の中でもトップクラスの図書館サービスを提供している。 中でも、昨年開館した札幌市図書・情報館は、わずか1500㎡という面積に 新たな利用者層も取り込み、開館1年足らずで100万人の来館者を獲得した。 「はたらくをらくにする」という明確なコンセプトを生かすため、本の貸出を行わず、レファレンス・サービスを重点的に行い、 日本十進分類法を配架に使わないなど、すべてが職員の工夫によって行われている。 このことは計画的に職員を育成したことによって成り立ったと思われる。 本来の図書館ネットワークが完成しているまちにおいて、何らかの図書館機能を特化させるという サービスの進化形を具現化したものであり、 札幌市の優れた図書館構想が、この図書・情報館や市民への図書館サービスを誕生させたことを評価した。

対象事業名:村民サービスと観光サービスをバランスよく満たす村立図書館の新モデル

機関名 恩納村文化情報センター

授賞理由

 図書館未設置自治体に2015年に開館して以降、図書情報フロアと観光情報フロア、さらには連結する博物館、隣接する道の駅的施設と連動して非常に広範囲かつ本質的なサービスを展開している。団体貸出を利用した村内リゾートホテルへのミニライブラリーの設置や観光客への利用者カード発行、利用に基づく近隣施設での割引実施等が注目されるが、同時に村立の図書館として地域資料の旺盛な収集と活用、サンゴのかるたや絵本の制作への貢献等、地域の知識・情報の創造に具体的な役割を果たしているそのバランスを評価したい。

対象事業名:知の公共性をひたむきに志向した,共創の舞台となる情報拠点の構築

機関名:県立長野図書館

授賞理由

 これからの「公共」とは何か,という非常に困難な問いに対し,正面から向き合っている図書館である。この図書館では従来の児童書の貸出に留まらない「体験の貸出」や,学生・社会人向けのコモンズの設置,知の公共圏を現出させるアンカンファレンスのスタジオたる信州・学び創造ラボなどを実装しており,他の図書館と参考となりうるモデルルーム機能をも持つことが特筆できる。これら空間・機能・サービスは単にトップダウンで作られたのではなく,館長のアイデアに触発されつつ,構成図書館員・住民・大学生・図書にかかわる様々な団体が討議しながら作り上げていった点を評価した。

対象事業名:高校生と実社会との繋がりを深める学校図書館改革

機関名:京都府立久美浜高等学校図書館

授賞理由

 同校では、地域社会と繋がり、地域資源を活用しながら行う地域探究を教育の柱とした新学科を2020年度に新設する。新教育の方針に即した学校図書館改革は2016年より本格化し、図書館の一般公開を機に、外部協力のもと様々な展示を企画して地域交流を図っている。学内での居場所づくりの推進や体験を伴う読書の推進を経て、2019年には高校生と教員、学校司書が地域のウィキペディアタウンに参加し、編集成果を学内で共有した。新カリキュラムに向けて段階を踏んで学習環境を整備し、高校生たちが実社会について学ぶ機会を創出し、地域探究を支える体制を築いてきたプロセス全体を評価したい。

ライブラリアンシップ賞 2019


対象事業名:日本における公立図書館のビジネス支援サービス推進と実践

機関名 ビジネス支援図書館推進協議会とその実践者

授賞理由

 2001年から公立図書館がビジネス支援サービスを行うための調査・研究を行い、関連セミナーを継続して開催している。また、図書館職員等を対象とした講習会を18回にわたり開催、その500名の受講者が、全国の図書館でビジネス支援サービスの構築に努め、同時に様々な図書館サービスに取り組んでいることを評価した。2019年にワシントンで開催されたALA年次大会には公立図書館職員と協議会関係者を派遣し、世界に向けて日本のビジネス支援サービス等の発表を行っている

対象事業名:書店,作家,出版社を巻き込んだ,学校図書館と外部のコラボレーションイベントの継続的な開催。

機関名 埼玉県高校図書館フェスティバル実行委員会

授賞理由

 2011年から3年間埼玉県高校図書館フェスティバルを開催,その後毎年「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本」という書店,作家,出版社を巻き込んだイベントを開催し,県民に学校司書の必要性と「人」のいる高校図書館の楽しさを感じてもらう活動に取り組んでいる。選考においては,外部との繋がりが疎かになりがちな学校図書館において,市民が多く参加するイベントでの広報活動を積極的に行っている点,書店や出版社,作家とのコラボレーションを盛んに行い随一の社会性を持っている点,立ち上げ時以外の委員が数多く加わり今後も継続した取り組みとなることが予想される点を評価した。