Library of the Year 2024 授賞理由

Library of the Year 2024 ライブラリアンシップ賞

長年にわたって地域住民や図書館員が協同し、さまざまな図書館的活動を継続的に行ってきた図書館等を称えるための賞です。なお、この賞におけるライブラリアンとは、図書館員グループおよび地域住民、関係者の総体を示しています。日本を代表する優れた図書館サービス等を、館種を超えた図書館や地域住民とともに、長期にわたって行ってきた活動を評価します。 

(以下、五十音順)


千葉市図書館情報ネットワーク協議会

【授賞理由】

30年にわたる館種を超えた図書館ネットワークの構築と発展

【授賞理由の詳細】

1994年の発足以来、公共8館(県立、市立中央、市立分館)、大学10館(千葉大、神田外語大、敬愛大、千葉経済大、放送大など)、専門7館(アジア経済研究所、量子科学技術研究開発機構、市美術館、市議会図書室など)という極めてユニークな地域図書館ネットワークを形成し、学術研究や生涯学習の発展に寄与してきた。相互貸借、レファレンス支援、共同研修、情報共有など多岐にわたる長年の活動は、加盟図書館間だけでなく、地域住民にもベネフィットをもたらし、市民に多様な図書館の存在と役割を伝えてきた。その活動の意義や価値が広く認知され、各地に同様の動きが生まれてくることを期待したい。

みなサーチ(国立国会図書館障害者用資料検索)とデータ提供館並びにデータ制作者の方々

【授賞理由】

障害の当事者・支援者らの参画による障害者用資料検索の実現

【授賞理由の詳細】

日本各地に暮らす障害の当事者・支援者らが長年にわたって構築してきた視覚障害者等用データと、国立国会図書館が構築した視覚障害者等用データが一体的に検索・利用できるようになり、利用者登録手続きがオンラインでも可能になった。事業の社会性と技術力の高さに加え、障害者用資料検索サービスの意義を当事者以外にも実感させたインパクトを評価する。各地の図書館やボランティア団体、そして国立国会図書館の息の長い連携により、連携した障害当事者らの努力がより効果的に活用される仕組みづくりに尽力したことを顕彰したい。立場の違いを超えた連携によって、誰一人取り残さない図書館サービスが今後も継続されることを願っている。


Library of the Year 2024 優秀賞

従来の図書館イメージを覆す図書館サービスを提供し、他の図書館等の参考となる先進的な活動を評価します。なお、この賞における図書館サービスには、図書館以外の機関が展開する「図書館的な取り組み」も含まれます。

(以下、五十音順)


泉大津市立図書館 シープラ

【授賞理由】

市民の当事者意識や図書館に対する信頼感の醸成につながる活動

【授賞理由の詳細】

常に新しい当事者を生む仕掛けがある。こどもの読書活動推進計画は策定の過程で図書館に集うこどもの意見を反映する等、こども基本法の理念にも則る先進的な取り組みである。また、オープンな場で開催される図書館協議会での議論を受けて次の仕掛けにつなげるスピード感は「図書館はやってくれる」という信頼感になる。泉大津市のことを真剣に考える場が図書館にあることで、シビックプライドの醸成に寄与している点も評価できる

沖縄県立図書館 “Finding Okinawan Roots” Project

【授賞理由】

移民ルーツ調査から始まる国境と世代を超えたコミュニティの形成

【授賞理由の詳細】

ウェブサイトを通じて、海外に移民していった沖縄県人のルーツ調査を4か国語で随時受け付けているだけでなく、データベース化した6万件の移民渡航記録を無料公開している。海外にある県人会などと協力して移民資料を掘り起こすことで、新たな郷土史料の発見、収集にもつなげている。図書館の活動が移住者と現在の県民の間に新たな交流を生み、郷土愛や誇りを醸成する役割を担っている点を高く評価したい。

国立がん研究センター「つくるを支える 届けるを贈る『がん情報ギフト』プロジェクト」

【授賞理由】

公共図書館を窓口にした「確かながん情報」へのアクセス保障

【授賞理由の詳細】

国立がん研究センターは、大規模な医療機関のない市町村でも公共図書館が存在することに着目し、科学的根拠に基づいたがん情報の冊子(「がん情報ギフト」セット)を全国の図書館へ寄贈する仕組みを構築している。より多くの人々に信頼性の高い医療情報を届けるための窓口として図書館は適任であり、図書館の医療・健康サービスにも新しい手法が加わった。「がん情報なら図書館へ」を目指した普及活動のさらなる展開に期待したい

真庭市立図書館

【授賞理由】

「真庭市図書館みらい計画」に沿ったまちぐるみの図書館活動

【授賞理由の詳細】

市民との対話による「図書館そだて会議」で策定したみらい計画を土台に、「あそび」の生まれる時間を大事にしながら、「生き方」「考え方」「暮らし方」の学び合いを実践している。統廃合校を含む市内の小中学校の校歌を卒業生とともに情報収集・整理・発信する「真庭校歌研究室」や、勝山高校図書委員会による「イチオシ本」展示の取り組みのように、図書館を拠点とした学びとつながりによって真庭市の一体感を醸成している。


Library of the Year 2024  協賛社特別賞

第一次選考会を通過した候補のうち、第二次選考会においてライブラリアンシップ賞または優秀賞に選出された以外の候補を対象とし、本事業の協賛社の投票により決定した賞です。


皇學館大学附属図書館ふみくら倶楽部

【授賞理由】

地域社会と大学図書館とをつなげる開かれた学生協働活動

【授賞理由の詳細】

学生・職員・教員の3者の協働により、2016年に大学図書館所属の学生ボランティアグループとして発足した。館内の企画展示などの普段の取り組みに加え、地元での一箱古本市の開催や県内公共図書館との連携イベントの実施など、初期から地域社会との交流にも活動領域を広げてきたことで、従来の学生協働の認識をよりオープンなものに変えている。活動領域を大学図書館内に閉じない姿勢により、さまざまな交流ネットワークで培った知識と経験を図書館活動へと還元し、ほかの学生や教職員の学びの場づくりに貢献している。1年ごとにメンバーが入れ替わる大学において、コロナ禍を経ても活動が継続できる安定した組織体制づくりも評価したい。


Library of the Year 2024 実行委員会特別賞

第一次選考会を通過した候補のうち、ライブラリアンシップ賞、優秀賞または協賛社特別賞に選出された以外の候補を対象とし、実行委員会メンバーの合議により決定した賞です。


埼玉県立飯能高等学校図書館(すみっコ図書館)

【授賞理由】

どんな生徒も必ず居場所が見つかる学校図書館の運営と公開

【授賞理由の詳細】

埼玉県立高校全体での学校図書館の活性化に対する積極的な取り組みも背景としながら、従来の学校図書館の常識を塗り替える空間を創出しており、本が苦手な生徒でも楽しめる「居場所」を実現している。独自の図書館評価指標を導入することで学内での重要性を高めているほか、他の機関・団体や一般市民と協働しての事業をさまざまな形で実施するなど、学校図書館にアクセスしやすい開放的な状況をつくり出している。積極的な情報発信や外部からの見学受入・図書館運営支援などを行うことで、「飯能高校らしさ」を形づくる役割の一端を担う存在となっており、絶えず学内での存在感を放ちながら学校運営に対して大きく貢献していることを評価したい。


<報道・報告などにあたって(お願い)>

Library of the Yearは図書館の活性化を目的の一つとしています。テレビ、新聞、雑誌、ウェブなど、各種メディアに取り上げていただくことを大変嬉しく思っています。受賞された自治体等が広報に活用していただくことも歓迎・推奨しています。

ただし、本事業はその名称こそ「Library of the Year」となっておりますが、「図書館的」な機関・組織等が行なっている先進的な「活動」を選考対象とするものであり、「日本一の図書館」を選出することを目的としているわけではありません(大賞を受賞した活動に対し、主催者が「日本一」という表現を用いないのは意図的なものです)。各種メディアでこの賞の結果を話題として取り上げていただく際には、本事業が意図する以下の留意点を踏まえていただくようお願いいたします。

  • 選考・評価の対象となるのは図書館等による先進的な「活動」であり、実施主体である「機関・組織等」ではありません。
  • 本事業は全国の図書館等を総合的・客観的に評価して「日本一の図書館」を決めるものではありません(大賞受賞活動を「日本一の図書館」と位置づけるものではありません)。あくまでも「他の図書館等の参考になる活動を行っているか」という基準にもとづき、選考委員・審査委員がそれぞれの観点から評価するものです。
  • 優秀賞、ライブラリアンシップ賞および特別賞を授与するに際しては、選考委員会と実行委員会の責任のもとに「授賞理由」を言語化し、本ウェブサイトにて広く一般に公開いたします。
  • 授賞は年に一度のみですが、選考・評価についてはここ数年程度の活動を対象とします。長期的な活動はライブリラリアンシップ賞として表彰します。

<Library of the Year 2024 最終選考会の開催について>

最終選考会は図書館総合展フォーラムとして、2024年11月7日(木)10:30~12:00 パシフィコ横浜にて開催いたします。皆様ふるってご参加ください。

なお、今年度の最終選考会は会場のみでの公開となり、オンラインによる配信はございませんのでご了承ください。

「Library of the Year 2024 最終選考会」については、図書館総合展の公式ウェブサイトでも開催情報を公開しております。

※ご参照URL:https://www.libraryfair.jp/forum/2024/1195

2024年10月7日

 Library of the Year 2024 実行委員会