「明治~戦中少女雑誌の権利者所在調査プロジェクト」について、順次ご紹介していきましょう。まず、発端となる熊本県菊陽町図書館の「少女雑誌村崎コレクション」についてご説明いたします。
日本には特徴的な『少女雑誌』という雑誌形態があり、特に明治から昭和初期に至るまで独自の発展を遂げてきました。「村崎コレクション」は、菊陽町在住の 村崎修三さんが収集した3000点を超える『少女雑誌』のコレクションで、2003年に菊陽町図書館へ寄贈され管理されています。
菊陽町図書館 少女雑誌のご紹介
http://www.kikuyo-lib.jp/hp/08_menu.htm
このコレクションは国立国会図書館の蔵書数をしのぎ、ここでしか読めない号も多数ある貴重なものです。今年度、ユネスコ記憶遺産の国内審査に申請したことでも話題になりました。
雑誌:記憶遺産に「図書館村崎コレクション」を申請 菊陽町 /熊本
http://mainichi.jp/feature/news/20150919ddlk43040326000c.html
しかし、戦後すぐのもので60年以上、古いものでは100年以上も前の雑誌資料ですから、劣化は避けられず、保存の観点から図書館資料であっても簡便な閲覧は難しくなってしまいます。
そこで、保存と活用の観点からデジタル化によるアーカイブ作業が必要になりますが、保存のためのデジタル化(電磁的記録)であっても、著作権法の規定によ り権利がクリアにならなければ保存は難しいという見解でした。なお、国立国会図書館は著作権法上の例外(第31条の2、3)により、デジタル化(電磁的記 録)と自動公衆送信が可能になっています。
逆にいえば、著作権法の規定をクリアすれば、保存・活用ができることになります。ただし、古い雑誌のように著作者の数が多岐にわたり、かつ著作者の生没年や著作権継承者が不明の場合は、著作権が存在しているかどうかが不明で、クリアまでの道のりは相当な難関です。
こうした場合に備えて、文化庁では「著作権者不明等の場合の裁定制度」が用意され、条件を満たせば著作物を使用できましたが、著作権者を探すための「相当 な努力」は「(新聞)全国紙で告知を出す」などハードルの高いものでした。しかし、昨年8月(平成26年度)に「裁定制度」が大幅に改訂され、実現可能な 程度にハードルが下がったのです。
著作権者不明等の場合の裁定制度
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chosakukensha_fumei/
本プロジェクトでは、稀少な雑誌資料の保存と活用のために、新しく改訂された「著作権者不明等の場合の裁定制度」に沿って裁定申請までの下準備を行い、そ こで生まれた知見やそのフローを共有することを目的としています。改訂された「相当な努力」とは具体的にどういうものなのか、どんな事例が現れるのかをこ のコラムでご紹介していきます。
(その1 了)