Library of the Year 2017 第一次選考結果発表! -候補館を公開いたします-

<<選考委員長コメント IRI_LoY担当理事山崎博樹>>

図書館を愛するすべての皆さまへ

今年もLibrary of the Year 2017(LoY2017)が動き始めました。
今回は全国から15の図書館等の公募推薦及び選考委員からは25の図書館等の推薦がありました。
多くの皆さまにご協力いただき大変ありがとうございました。

推薦いただいた図書館等を対象とした第一次選考を7月20日(木)、選考委員により行いました。
激論の結果、17の図書館等が選考されましたが、昨年からは選考のプロセスをできるだけ可視化したいと考え、選考一覧及び推薦理由をここに公開します。

現在、8月25日(金)の優秀賞、ライブラリアンシップ賞の選考に向けて、事務局では準備を進めております。最終選考会は、11月8日(水)に図書館総合展会場にて行う予定ですが、大賞に加え会場参加者により決定するオーディエンス賞も設けておりますので、皆さまにも直接選考に関わっていただければと思います。

また、IRI事務局ではこの事業をクラウドファンディングで実施しています。
ぜひこちらの方も、多くのご協力いただければ、幸いです。
詳しくはこちら:https://readyfor.jp/projects/LoY2017    

 

<<第一次選考結果 推薦候補機関及び推薦文>>

※順不同です。


(公共図書館)

  • 恩納村文化情報センター

観光立村である恩納村では、図書館サービスを観光に役立てる取り組みに力を入れている。観光情報フロアでは、観光や図書館資料を活用した情報を提供しているが、お客様からも写真投稿ができるなど双方向の情報交換ができるしくみがある。また、誰でも作成できる利用カード、リゾートホテルに図書館の本を置き宿泊客へ提供するミニライブラリー事業など、観光客にもおしみない情報提供を行っている。沖縄の民話・方言・歌に触れる企画やサンセットウィーク(夕日が沈む時間に閉館)など、地域資源を活かした取り組みが魅力的である。
http://www.onna-culture.jp/

 

  • 瑞穂町図書館

レトロな建物とは裏腹に、電脳化で「仕掛ける図書館」

地域資料のデジタル化・英語翻訳を手始めとし、被写体認証技術なども駆使し、人間の五感に響く事業を展開。さらには、瑞穂町に在住していた「大瀧詠一さん」のファンも巻き込み、図書館が中心となった地域活性化を継続的に仕掛けている。
https://www.library.mizuho.tokyo.jp/

 

  • 千代田区立千代田図書館の「特徴あるコレクションの活用」事業

専門的なコレクションの活用を目的に、外部研究者と協働でコレクションの調査研究を進め、その研究成果を図書館が行う企画展示や講演会として一般に発表するという、二段階方式の活用・利用促進手法は参考になるだろう。
http://www.library.chiyoda.tokyo.jp/

 

  • 大阪市立図書館

20年以上にわたってデジタル化している貴重資料のうち一部の画像を「CC-BY」の条件でオープンデータ化。Web上での展示やオープンデータ画像人気投票、活用事例紹介ページの公開、他機関とのコラボイベントなど、地域経済の活性化に資することを目的に、ますますの活用促進を図っている。
http://www.oml.city.osaka.lg.jp/

 

  • 秋田県立図書館

県立図書館として市町村支援の手厚さ、直接サービスの充実、デジタルアーカイブや課題解決支援など、他に抜きんでた活動を行っている。

・市町村支援:「打って出る図書館」を県立図書館の運営目標に掲げ、市町村の図書館の支援に奔走している。定期的な巡回訪問に留まらず、研修会や新館・リニューアル相談など、実際に市町村図書館や県立学校に赴いて支援をしている。県北・中央・県南と地区ごとの担当者がおり、互いに顔と顔がわかり、相談しやすく、深い信頼関係が築かれている。

・直接サービスの充実:開館は明治32年。明治35年にはわが国最初の巡回文庫を開設。長い歴史の中で蓄積された豊かな資料と、運営方針である「県民の生活、仕事、文化等を支援するサービスの充実」により充実の資料やデータベースは、利用者満足度の指標のひとつとなっており、それは貸出冊数の増加に現れている。市町村図書館にとっても、協力レファレンスサービスや相互貸借など、享受するところが多い。

・デジタルアーカイブ:先進的に取り組んできたデジタルアーカイブ。県立図書館所蔵の貴重資料や雑誌など新聞見出し検索など、webを通じて、県内の様々な情報にアクセス可能。
http://www.apl.pref.akita.jp/index.html

 

  • 日野町図書館(鳥取県)

財政再建団体になるかと心配されるほど悪化した財政状況の中でも、図書館は重要な施設という信念でサービスを維持。深刻な人口減少が続く町に図書館の機能が根付くよう、様々な戦略的な仕掛けを行う図書館 ”よらいや図書館”と名付けられたいわゆるまちライブラリー。(よらいやは方言でその意味は『寄ってみようよ』)。図書館に来館できないのは距離の問題だけではなく、個人の様々な状況によると考え、障がい者サービスの視点で展開している。図書館に来たくても身体的理由や仕事、その他の理由のため図書館に来れない人や、観光客に、町じゅうどこでも図書館を身近に感じ利用してもらうため、人の集まる場所(店舗・病院・民家等)に『よらいや図書館』を設置した。図書館の所蔵資料を町内のポイント最大15箇所に配架。4年前に調達した軽ワゴンを図書館車として町内で活用。昼間の人の少ない時間帯に定期的な図書館車の巡回をしても必要とする人のところへ情報が届けられないと考え、利用希望の調査するため、移動販売車とともに町内を歩く。高齢者サロンや病院や公民館のカフェ、保育所、子育て支援室など、人のいるところに本を届ける出前図書館も、この軽ワゴンの機動力を活用して展開。本・情報を必要とする人のところに本・情報を確実に届けるということを信念としてサービスを展開中。
http://tosyo.town.hino.tottori.jp/

 

  • 小山市立中央図書館(栃木)

図書館による農業支援サービスの先駆者であり、海外の図書館に向けても日本独自のビジネス支援サービスをPRしている点を評価したい。同図書館では、地域に根ざした図書館サービスの充実と農業の活性化および地域の振興・発展に貢献することを目的に、2007年から農業支援サービスに力を入れている。図書館の機能や資料を活用し、市農政課、栃木県下都賀農業振興事務所、JA等関係機関と連携・タイアップして実施。農業支援のコーナーやブックリストを作ることから始まり、現在では「おやまブランド特産品コーナー」「家庭菜園のコツ相談事業」「おやま地産地消ライブラリー」と事業を拡大している。また、日本の地域の実情に即したビジネス支援を海外で紹介したまちの図書館としては初である。2017年度アメリカ図書館協会(ALA)にて「Oyama Library : Outreach of Farmers to Support Local Agricultural Industry」のタイトルでポスター発表を行った。
https://library.city.oyama.tochigi.jp/

 

  • 瀬戸内市民図書館もみわ広場

平成の大合併による3町から1市への移行を経て2016年に開館。2010年の現市長の選挙公約に基づく整備推進、2011年の準備室長の採用、同年からの移動図書館サービスの実施や市民参加を重視した図書館整備等、整備プロセスの適切さや的確さを評価する。なお、6年に及ぶ着実な過程を経て開館した後は日本全国から連日視察・見学者を集めており、テーマ配架やMLAK連携、職員体制等、これからの図書館整備の模範例の一つと言える。
https://lib.city.setouchi.lg.jp/

 


(学校図書館)

  • 埼玉県高校図書館フェスティバル実行委員会

図書館関係者だけでなく書店,作家,出版社,教員,議員などを巻き込みながら,学校図書館の置かれている状況や可能性をWebストリーミングやTwitterなど多様なメディアを使い発信し続けている。埼玉県立高校図書館の学校司書がチームで運営しており,図書館活動のPRや図書館間での協力関係において,他館種でも大いに参考になると思われる。
http://shelf2011.net/

 

  • 神奈川県立田奈高等学校図書館「ぴっかりカフェ」/
    神奈川県立大和東高校「BORDER CAFE」(NPO法人パノラマ)

学校図書館の「学校と社会をつなぐプラットフォーム」機能を明らかにした点で、注目するべき取り組み。2014年12月11日にスタート。学校図書館で毎週木曜日の昼休みと放課後にオープン。生徒にソフトドリンクやスナック無料提供。運営は「NPO法人パノラマ」が担い、その運営資金はクラウドファンディング等の寄付金や助成金で賄われている。

当初は、図書館で3年間取り組んで来た若者支援の専門家と生徒の自然な出会いの場をつくるプロジェクトの継続だったが、カフェというスタイルの導入によって、生徒の自立・就労支援へとつながる可能性がさらに広がっている。
以下のような効果が挙げられる。

1)学校外の大人が学校に関与できる機会を拡大できる。
2)飲み物やお菓子の寄付という直接的間接的な支援ができる。
3)生徒たちは学校に居ながらにして様々な大人と交流できる。
4)生徒が抱える課題の早期発見ができる。
5)生徒が将来にわたる人的つながりの構築ができる。
6)生徒が学校図書館の資料と専門職員による豊かな文化的体験を享受できる。
http://www.tana-h.pen-kanagawa.ed.jp/career/cafe.html


(専門図書館)

  • 大和学園キャリエールホテル旅行専門学校と京都栄養医療専門学校情報ライブラリー

観光専門学校図書館のリーディング校として常勤司書を配置し、活発な利用教育を行うキャリエールは、グループ校の京栄校図書館と連携した学生の自主活動も盛ん。観光立国を目指す専門教育の向上のため、義務設置ではない図書館に力を入れ、充実を図る。グループ内の図書館連携が、今後の専門学校図書館活動の先進的な事例となる。
http://library.taiwa.ac.jp/

  • 公益財団法人 松竹大谷図書館

5年連続でクラウドファンディングにて資金調達(毎年約300万)を行い、「芝居番付検索閲覧システム」、「GHQ検閲台本検索・閲覧システム」など所蔵資料のデジタル化と公開を行い、文化資源の保存を行ってきた点は評価できる。
http://www.shochiku.co.jp/shochiku-otani-toshokan/

  • 神奈川県資料室研究会

1961年に発足し、50年以上の活動を継続してきた神奈川県、近隣都県内の企業、大学、公共機関等の資料室、図書館、情報部門によって構成される神奈川県立川崎図書館のいうなればユーザーグループ。特に事実上の産業・ビジネス・科学の専門図書館である川崎図書館の在宅利用文献複写サービスを同会口座の預託金から料金精算できる仕組みを構築・提供してきた点は秀逸。川崎図書館の存続問題でも大きな役割を果たした点も評価する。
https://saas01.netcommons.net/


 (その他)

  • 特定非営利活動法人 本と人とをつなぐ「そらまめの会」

二つの市立図書館の指定管理者として、10年にわたり地域で愛される図書館づくりを行ってきた。2017年4月からは廃止されていた移動図書館車を「ブックカフェ」として再生するプロジェクトのクラウドファンディングをスタート。7月に図書館関係としては国内最高額である1000万円を達成した。支援者の5割近い人たちが地元の人たちであり、日頃から地域とつながる図書館活動を実現してきたことを評価したい。
http://soramamenokai.wixsite.com/soramamenokai

 

  • 国立国会図書館 レファレンス協同データベース

図書館の現場で行われているレファレンスサービスの事例を蓄積し,Twitterや講習会を通じて積極的に事例の公開に努めている。また国会図書館だけでなく,公共図書館,大学図書館,学校図書館,専門図書館等の他館種の参加を促し多種多様な事例が集めており,国内外を含めて他に類を見ない取り組みである。
https://crd.ndl.go.jp/reference/

 

  • ウィキペディアタウン

2012年にイギリスで始まり、2013年には日本でも始まったウィキペディアの記事充実を図るボランタリーな取り組み。日本での展開では、特に図書館を中心としたMLAK機関が資料や作業環境の提供を行い、ウィキペディアンの協力を得ながら、すでに日本全国で100回以上開催されている。図書館等による新たな知識創造の取り組みとして評価する。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%82%AD%E3%83%9A%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%B3

 

  • バリューブックス

2011年より東日本大震災で被災した陸前高田市図書館の再建のために寄贈本の買い取りとその寄付プロジェクト「陸前高田市図書館ゆめプロジェクト」を展開、仮設図書館の建設を経て、本年7/20に新図書館が開館。

また、これを契機に同じスキームにより「チャリボン」(寄付本)プロジェクトを展開。大学、NPO、NGO、出版社、図書館など知や本をめぐる団体支援を展開している。

さらに私設のLibrary Lab.を設け、図書館や本の可能性を探っていることから、今後に続く拡大展開が期待できる。

本の「物」としての価値を社会化することで、図書館や学びの組織の支援を行うスキームは「市場の公共」の取組として優れているとともに本の価値を改めて知らしめた。

https://www.valuebooks.jp/
http://books-rikuzen.jp/
https://www.charibon.jp/


なお、「Library of the Year 2017」第二次選考会は公開で開催します!
詳細は こちら をご覧ください。